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放射線治療科


 放射線治療科は悪性腫瘍の放射線治療を中心に、甲状腺眼症やケロイドなどの良性疾患の放射線治療も行っています。高精度放射線治療センターは、最先端の放射線治療法であるIMRT(強度変調放射線治療:腫瘍の形に合わせて放射線を集中する治療法)、VMAT(強度変調回転照射:IMRTを回転しながら素早く行う治療法)、SBRT(体幹部定位放射線治療:正常組織を傷めないように細い放射線を多方向から病巣に集中するため、1回に大量の放射線をかけることができる治療法)などの高精度放射線治療を行える施設です。当センターに設置された放射線治療装置は、Elekta社(スウェーデン)の最高機種 「Versa HD」です。

治療・設備について

放射線治療装置

 2016年の病院開設時より、放射線治療装置は、エレクタ社(スウェーデン) のフラッグシップモデルであるVersa HDを設置しています。Versa HDは一般的な放射線治療から、IMRTや定位放射線治療などといった高精度放射線治療まで、一台で幅広い放射線治療が高い精度で行うことが出来る装置です(図1)。高精度放射線治療には高度な放射線医学、放射線治療技術や放射線物理学の知識を必要としますが、当院では放射線治療専門医が3名、放射線治療専門放射線技師、放射線治療品質管理士、医学物理士の有資格者がそれぞれ2名ずつおり、安心安全な放射線治療を提供できると自負しております。 治療装置の機能を十分に発揮するためには治療計画装置も高性能でなければなりませんが、これも最高機種のMonaco5.1を採用しています。

高精度放射線治療について

 IMRTは腫瘍の形に合わせて放射線を集中してかけ、周辺の正常組織の放射線量を急激に減らす機能です。これにより、周辺の正常組織の副作用を低く抑えながら腫瘍への放射線量を増やし、腫瘍制御の可能性を向上させることができると考えられています。VMAT(強度変調回転照射)はIMRTを回転しながら行う機能で、より高精度なIMRTが可能ですが、当院ではほとんどのIMRTをこのVMATで行っております。IMRTは一般的には前立腺癌や頭頸部の癌には標準的に使われていますが、当院ではさらに、肺癌や血液悪性疾患などにも用いて治療を行っております。 SRT(定位放射線治療)は、細い放射線を多方向から病巣に集中してかける治療法で、正常組織への放射線を分散することができるため、一回に大量の放射線をかけることができる治療法です。小さな転移性脳腫瘍などに対して数回で放射線治療を完了することができます。上記のSRTを体幹部に応用したのがSBRT(体幹部定位放射線治療)ですが、体幹部の小さな病変であれば同じく1~数回で放射線治療を完了することができます。

当科で特徴的な治療について

 免疫チェックポイント阻害薬は複数の癌腫で積極的に使われています。2019年版の肺癌診療ガイドラインで切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌において、同時併用化学放射線療法後にデュルバルマブによる地固め療法を行うように推奨されました。その背景にあるのが国際共同第Ⅲ相無作為化試験(PACIFIC試験)で5年の無増悪生存期間はプラセボ群19%に対し、デュルバルマブ群は33.1%、5年の全生存期間はプラセボ群33.4%に対し、デュルバルマブ群42.9%と有意差をもって改善が得られました。当院でも2018年から開始されており、多くの患者さんが既に治療を受けています。前立腺癌に対する放射線治療では高精度放射線治療によっても直腸への高線量の照射を避けることはできず、直腸出血がGrade2(内科的治療を要する症状)で6%発生しています。当院では2020年8月から前立腺と直腸の間にSpace OARハイドロゲルを留置する方法を導入し、毎年約20名前後の方に実施しております。Space OARの留置により直腸への高線量が低減でき、直腸出血のリスクを減らすことが出来ると考えています。下図の中央部の白い構造が前立腺と直腸の間に留置されたSpace OARです。これは最終的には吸収されて消失します。群馬県内でSpace OARの留置を行っている施設は僅かであり、当院の特色とも言えます。

当科の実績

 渋川医療センターは北毛地域唯一の放射線治療実施施設であり、渋川地域のみならず、沼田地域や吾妻地域など、広範囲の地域から患者さんが来院されます。遠距離や体調の問題で外来通院での放射線治療ができないこともしばしばあり、その時は放射線治療科に入院して頂いております。放射線治療科として病床を有する施設は少なく、上記地域以外の群馬県内からも患者さんが来院されています。 令和4年1月から12月までの全放射線治療患者は334例でそのうち新患は270例であった。国立病院機構の年度別統計データによると、令和4年度の放射線治療の件数は全国立病院70病院のなかで渋川医療センターの治療件数は15位、IMRT数は11位、関東甲信越ブロック20病院のなかでは治療件数は6位、IMRT数は5位であった。治療装置1台あたりの放射線治療件数は全国立病院中は3位、IMRT数は4位、関東甲信越ブロックでは治療件数1位、IMRT数は3位であった。
 新患数は272例の疾患別の内訳は日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の原発巣別分類に従うと、多い順に肺・気管・縦隔が76例、泌尿器系74例、乳房73例、造血器リンパ腫20例、肝・胆・膵7例、胃・小腸・結腸・直腸6例、食道癌5例、皮膚・骨・軟部3例、婦人科2例、原発不明2例、良性疾患1例、頭頚部1例であった。

医師紹介


役職 放射線治療部長、高精度放射線治療センター長
名前 神沼 拓也 (かみぬま たくや)
卒年 群馬大学 平成17年卒
専門分野 放射線治療科
資格 医学博士
日本放射線腫瘍学会 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
日本医学放射線学会 研修指導者
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医指導責任者
臨床研修指導医
緩和ケア研修会修了
日本核医学会 PET核医学認定医
第1種放射線取扱主任者
難病指定医
役職 高精度放射線治療センター顧問
名前 松浦 正名 (まつうら まさな)
卒年 群馬大学 昭和57卒
専門分野 放射線治療科
資格 医学博士
日本放射線腫瘍学会 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
日本医学放射線学会 研修指導者
臨床研修指導医
緩和ケア研修会修了
難病指定医
身体障害者福祉法指定医
役職 放射線治療科医師
名前 桑子 慧子 (くわこ けいこ)
卒年 群馬大学 平成20年卒
専門分野 放射線治療科
資格 日本医学放射線学会 放射線科専門医
緩和ケア研修会修了
難病指定医
役職 放射線治療科医師
名前 中村 勇司(なかむら ゆうじ)
卒年 群馬大学 昭和56年卒
専門分野 放射線治療科
資格 日本放射線腫瘍学会 日本医学放射線学会 放射線治療専門医
臨床研修指導医
臨床研修協議会 プログラム責任者養成講習会
緩和ケア研修会修了
難病指定医
身体障害者福祉法指定医
日本スポーツ協会 スポーツドクター