麻酔科について
「安全な手術麻酔と安心な術後鎮痛」
地域の皆様が手術を受ける際に安全な麻酔を提供すると同時に、
多くの患者さんが気に掛ける手術後の鎮痛についても体制を整備しています。
診療内容について
当科で提供できる麻酔方法のご紹介
当科で扱っている麻酔方法は以下の通りです。
- 全身麻酔:鎮静薬と鎮痛薬を用いて意識と痛みのない状態にします。ほとんどの場合、人工呼吸管理が必要になるため、意識がなくなった後に器具を用いて患者さんの気道確保を行います。
- 脊髄くも膜下麻酔:局所麻酔薬を腰から神経の近くへ少量注入し、下半身を痛みのない状態にします。通常は手術中も意識が保たれますが、必要に応じて鎮静薬を使用することがあります。
- 硬膜外麻酔:局所麻酔薬を、脊髄を包む硬膜の外側へ注入し、胸腹部から下肢にかけて痛みを抑えます。通常は手術中も意識が保たれますが、必要に応じて鎮静薬を使用することがあります。
- 神経ブロック:局所麻酔薬を神経の近くへ注入し、手足の一部分を痛みのない状態にします。通常は手術中も意識が保たれますが、必要に応じて鎮静薬を使用することがあります。
麻酔の意義
手術中の患者さんの快適さを確保するために以下のようなことを行います。
手術に伴う痛みや体への負担を抑えるため、麻酔によって痛みを感じない状態にします。これには、以下のような方法があります。
- 全身麻酔(意識と痛みをなくした状態で行う麻酔)
- 脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔(下半身や広範囲の手術に用いられる)
これにより、患者さんは手術中の痛みを感じることなく、安全に手術を受けることができます。
手術によっては、患者さんが完全に眠った状態(全身麻酔)で行う必要があります。これは、手術のストレスを軽減し、不安を取り除くためにも重要です。
全身麻酔では、麻酔薬によって眠った状態を保ち、手術中に痛みや不安を感じないように調整します。
脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔で行う手術では、必要に応じて鎮静薬を使用し、リラックスした状態で手術を受けられるようにします。
このように、患者さんの状態や手術の種類に応じて、適切な方法が選ばれます。
手術は患者さんにとって大きなストレスです。麻酔によって、不安や恐怖を取り除き、リラックスした状態で手術を受けられるようにします。特に以下のような影響を防ぐことができます。
- 血圧の急上昇(痛みやストレスによる影響)
- 心拍数の増加(不安や恐怖による交感神経の興奮)
- 手術中の不安・緊張・不快感
適切な麻酔管理によって、患者さんの身体的・精神的負担を軽減できます。
手術が終わった後も、痛みが強いと患者さんの回復に悪影響を与えます。そのため、麻酔科医は術後の疼痛(とうつう)管理も担当します。
- 硬膜外麻酔や神経ブロックによって、術後の痛みを長時間抑える
- 鎮痛薬の適切な投与により、患者さんの快適さを保つ
- 痛みの程度を定期的に評価し、必要に応じて調整する
こうした術後の痛み管理が適切に行われることで、患者さんの回復が早まり、合併症のリスクも低減します。
当院における手術麻酔の目的は、単に痛みをなくすだけでなく、手術を受ける患者さんが安全かつ快適に過ごせるようにすることです。
日本麻酔科学会が推奨する麻酔管理では、術前・術中・術後の全ての段階で患者さんの状態を見守りながら、適切な麻酔を提供することが重要とされています。
このように、麻酔は手術を受ける患者さんの「安心」と「安全」を支える重要な役割を果たしています。
手術中の安全を確保するために全身管理を行います
手術麻酔の重要な役割の一つに、「手術中の全身管理」があります。これは、単に患者さんを眠らせるだけでなく、手術中の呼吸・循環・体温などの全身の生理機能を適切に維持し、異常が起きた場合には迅速に対応することを意味します。日本麻酔科学会も、麻酔科医の役割として「周術期の全身管理」を強調しており、手術の安全性を大きく左右する要素とされています。
手術中、特に全身麻酔では、患者さんの呼吸が弱くなったり、自分で十分に呼吸できなくなったりすることがあるため、人工呼吸管理が必要になる場合があります。
気道確保
全身麻酔では、人工呼吸が必要になるため麻酔科医は以下の方法で気道を確保します。
- 気管挿管(口または鼻からチューブを入れ、人工呼吸器につなぐ)
- ラリンジアルマスク(喉の奥にマスク状の器具を入れ、酸素を送る)
酸素供給と換気管理
手術中は血中酸素濃度(SpO₂)を常に監視し、必要に応じて酸素濃度や換気量を調整します。また、二酸化炭素(CO₂)の排出も適切に行います。
手術や麻酔の影響で、血圧や心拍数が大きく変動することがあります。特に以下のような場合、麻酔科医が適切に管理することが必要です。
血圧の維持
- 手術中の出血により血圧が低下する場面
- 麻酔薬の影響で血管が拡張し、血圧が下がる場面
- 痛みやストレスで交感神経が刺激され、血圧が上がる場面
対処法:
- 血圧低下時:輸液や昇圧薬を使用
- 血圧上昇時:鎮痛薬を追加、降圧薬を投与
心拍数の管理
麻酔や手術操作により頻脈(心拍数増加)や徐脈(心拍数減少)が起こることがあります。高齢者や心疾患を持つ患者さんでは、より慎重な管理が求められます。
対処法:
- 必要に応じて薬剤や輸液を調整し、心拍数を安全な範囲に保ちます。
- ペースメーカーを使用している症例では麻酔前後に調整が必要な場合があります。
長時間の手術では患者さんが低体温になりやすいです。体温が低下すると血液凝固能の低下や免疫機能の低下が起こり、術後の回復が遅れるため、適切な管理が必要です。
対処法:
- 温風式加温装置を使用
- 温かい輸液や輸血を用いる
- 手術室の温度調整を行う
目標:体温を36℃以上に保つことが推奨されています。
手術中の大量出血は、命に関わる重大な事態です。麻酔科医は、出血の量を常に監視し、必要に応じて輸液や輸血を行います。
出血量の把握
- 吸引量や術野の状況などから、出血量を把握
- 血液検査を行い、貧血状態を評価
必要に応じた輸血
- 出血が多くなる場合は輸血を検討
- 赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿(FFP)、血小板製剤を適切に選択
目標:貧血を防ぎ、血液の酸素運搬能力を維持する
手術中には、血圧低下、アレルギー反応、大量出血など、まれに急な変化が起こることがあります。麻酔科医はこうした変化を早期に察知し、迅速に対応できるよう備えています。
手術中の全身管理は、単に「眠らせる」だけではなく、呼吸・循環・体温・出血・異常事態などを総合的にコントロールすることを意味します。
日本麻酔科学会では、これらの管理を「周術期管理」の一環と位置づけており、手術の安全性を高めるために麻酔科医の専門的な知識と技術が不可欠であるとしています。
麻酔科医が適切に管理することで、手術のリスクを最小限に抑え、患者さんが安全に手術を受けられる環境を整えることができます。
ご案内
手術中の安全確保や術中覚醒の防止と同時に、速やかな術後覚醒を目指しています
当院では、麻酔の深さ、筋肉の回復、呼吸の通り道を複数の機器で確認しながら、患者さん一人ひとりに合わせた麻酔管理を行っています。
麻酔中の脳波モニターとは?
手術中、麻酔で眠っている間に「どのくらい深く眠っているか」を測るために使われるのが脳波モニターです。「麻酔の効きが十分か」「麻酔が深くなりすぎていないか」これをリアルタイムで確認するための機器です。

脳波モニターの役割と利点
もし麻酔が十分に効いていないと、手術中に意識が戻る可能性があります(「術中覚醒」と呼ばれます)。脳波モニターでしっかり監視することで、「眠りが浅くなっていないか?」をチェックできます。
麻酔が深すぎると、手術後になかなか目が覚めないことがあります。脳波モニターを見ながら適切な麻酔量を調整することで、手術後にスムーズに目が覚めるようにできます。
麻酔の効き方には個人差があります。
- 年齢
- 体質
- 使っている薬
これらによって麻酔の効き方が違うので、脳波モニターを使うことでその人に合った麻酔の量を調整できます。
当院では手術室全室に脳波モニターが装備されており、きめ細やかな麻酔管理を行っています。
全身麻酔中の筋弛緩(きんしかん)モニターとは?
手術中、患者さんの筋肉の動きを一時的に弱める薬(筋弛緩薬)を使うことがあります。この薬により、手術や人工呼吸を安全に行いやすくなります。
筋弛緩モニターを用いることで、薬の効き具合を客観的に確認し、手術中から手術後まで安全な状態を保つよう調整します。

筋弛緩モニターの役割と利点
手術によっては患者さんの筋肉が完全に力を抜いた状態(弛緩した状態)でなければ、安全に行えません。筋弛緩モニターを使うことで、薬がしっかり効いているかを確認し、適切な量を調整します。
全身麻酔の終了時には、自分で十分に呼吸できる状態に戻っているかを確認します。しかし、筋弛緩薬がまだ残っていると、うまく呼吸ができないことがあります。筋弛緩モニターを使って、ちゃんと筋肉の力が戻っているかを確認してから麻酔を終了することで、スムーズに目覚めることができます。
筋弛緩薬の効き方には個人差があります。モニターを使えば、その人に合わせたちょうどよい筋弛緩の量を調整できます。
当院では手術室全室に信頼性の高い筋電図式筋弛緩モニターが装備されており、手術中と手術後の両方で安全なバランスがとれた麻酔を行っています。
安全な全身麻酔導入や気道確保を実現する体制を整備しています
ビデオ喉頭鏡とは?
全身麻酔では、呼吸を補助するために気管挿管を行うことがあります。これは口からチューブを入れて気道(空気の通り道)を確保する重要な手技です。
このときに使うのが喉頭鏡(こうとうきょう)という器具ですが、最近では「ビデオ喉頭鏡」というカメラ付きのものが普及しています。


ビデオ喉頭鏡の利点
従来の喉頭鏡(直接喉頭鏡)は、医師が直接「のど」の奥をのぞき込んでチューブを入れなければなりませんでした。しかし、ビデオ喉頭鏡は小さなカメラで「のど」の様子を画面に映すため、よりはっきりと視野を確保できます。
のどの形が複雑だったり、舌が大きかったりする患者さんでは、従来の方法では挿管が難しいことがあります。ビデオ喉頭鏡ならカメラで広い視野を確保できるので、難しいケースでも成功しやすくなります。
ビデオ喉頭鏡は画面に映像を表示するので、複数の医療スタッフが同時に状況を確認できます。これにより、手術室チームでの協力がしやすくなり、より安全な挿管が可能になります。
挿管のときに「のど」や声帯を傷つけるリスクがありますが、ビデオ喉頭鏡では視野を確保しやすいため、気道を傷つけないよう注意しながら操作しやすくなります。
当院では種類の異なるビデオ喉頭鏡を複数台用意し、必要に応じてビデオ喉頭鏡を用いた麻酔導入・挿管に対応できる体制を確保しています。
全身麻酔における「気管支内視鏡システム」とは?
全身麻酔では、手術内容や患者さんの状態に応じて、人工呼吸器につなぐための「気管挿管」を行うことがあります。
このとき、「のど」から気管にチューブを入れるのですが、状況によっては「より正確な位置にチューブを入れる必要がある」ことがあります。そのために使われるのが「気管支内視鏡システム」です。
これは、先端に小型カメラがついた細い管(気管支ファイバースコープ)で、気管の中を直接観察しながら、安全に処置を行うための装置です。


気管支内視鏡システムの利点
気管挿管は、目視だけでは正しくチューブが入っているか判断が難しいことがあります。気管支内視鏡を使うと、チューブの位置を直接確認しながら、適切な位置に調整することができます。
肺の手術では、片方の肺だけに空気を送り、手術する側の肺をしぼませる必要がある場合があります。このときに「左右の肺を別々に換気できる特別なチューブ(ダブルルーメンチューブ)」を使いますが、適切な深さに入れるのが難しいため、気管支内視鏡が必要になります。
手術中に、以下のような「気道のトラブル」が起こることがあります。
- チューブがずれる → 呼吸がうまくできなくなる
- 痰(たん)や分泌物が詰まる → 空気の流れが悪くなる
- 気道が腫れる → 酸素がうまく入らない
気管支内視鏡を使うと、手術中にこれらのトラブルを素早く発見し、適切に対応することができます。
チューブを抜く前に、気道内の分泌物や出血の有無を確認し、安全な抜管判断に役立てることがあります。
当院では呼吸器外科(肺外科)の手術症例を多数行っているため、解像度や視野に優れた大きなモニターを用いた気管支内視鏡システムが手術室専用で使用できるよう装備されています。
安心できる術後鎮痛を提供しています
術前の禁煙(電子たばこ・加熱式たばこも同様です)

手術の前に禁煙をお願いします。これは麻酔を安全に受けていただき、手術後の回復をスムーズにするためです。
たばこは、手術や麻酔に影響が出ることがあります。しかしながら、禁煙することでリスクを減らし、より安心して手術を受けることができます。
禁煙が大切な理由
① 呼吸が楽になり、麻酔の影響を減らせます
たばこを吸うと肺や気道に炎症が起こりやすくなり、以下の危険があります。
- 麻酔中に痰(たん)が増えて気道が詰まりやすくなる
- 麻酔後に咳がひどくなり、傷口に負担がかかる
- 肺炎のリスクが上がる
手術前に禁煙すると、肺の状態が良くなり、こうした危険を減らすことができます。
② 傷の治りが早くなります
たばこに含まれるニコチンは血管を細くし、血流を悪くする作用があります。そのため、手術後の傷の治りが遅くなったり、感染しやすくなったりすることがあります。禁煙すると、血流が改善し、傷の治りが早くなります。
③ 血圧や血流が安定し、心臓への負担を減らせます
たばこは血圧を上げたり、血の塊(血栓)を作りやすくしたりするため、手術中や手術後に心臓や血管のトラブルが起こる可能性があります。禁煙すると血圧や血流が安定し、心臓への負担が減るので、手術がより安全になります。
いつから禁煙すればいいの?
理想は「手術の4週間前」から
4週間以上禁煙すると、肺や血管の状態が大きく改善し、手術の安全性が高まります。
ただし、「手術直前」でも禁煙する価値があります
「今から禁煙しても意味があるの?」と思うかもしれませんが、手術直前からでも禁煙することで、血液中の一酸化炭素が減るなど、体にとってよい変化が期待できます。
手術当日に身につけていてはいけないもの
いずれも、手術中の安全確認や麻酔管理を確実に行うために必要な準備です。ご不便をおかけしますが、ご協力をお願いします。
安全に手術・麻酔を行うため、手術当日は以下のものを身につけたまま手術室に入ることはできません。やけど、感染、モニター装着不良、気道管理の妨げになる可能性がありますので、必ず外してください。
身につけていてはいけないものとその理由
① アクセサリー類(指輪・ネックレス・ピアス・腕時計など)
- 手術中に体がむくんで外れなくなることがある
- 電気メスを使うときにやけどの原因になる
- 落ちると手術の器具に紛れたり、体内に入ったりするリスクがある
→ 手術前にすべて外してください。
② コンタクトレンズ
- 手術中は目を閉じた状態なので、視力補助が必要ない
- コンタクトレンズは目が乾燥しやすく、トラブルの原因になる
→ 手術前に外し、必要なら看護師に預けてください。
③ 入れ歯
- 麻酔中に外れて喉に詰まる危険がある
- 気管挿管(人工呼吸のための管を入れる処置)のときに破損する可能性がある
→ 外してケースに入れ、看護師に預けてください。
④ ネイル・マニキュア・ジェルネイル
- 爪の色で体の状態(血の巡り)を確認するため
- パルスオキシメーター(指につけて血中酸素を測る機器)が正しく測れなくなる
→ 事前に落としてください。
⑤ 化粧(ファンデーション・口紅・アイメイク)
ファンデーションは、顔色や皮膚の状態を確認する妨げになることがあります。
口紅やアイメイクは、顔色の確認やテープ固定、目の保護の妨げになることがあります。
→ 手術当日は化粧をせずにお越しください。
⑥ つけまつげ・まつげエクステ
麻酔管理中に脱落するおそれがあります。
テープや器具で目を保護するときに取れてしまうことがあります。
→ 事前に外せるものは外し、ある場合は入院時にお申し出ください。
⑦ カツラ・ウィッグ・ヘアピン
ずれてしまうと手術の妨げになることがあります。
ヘアピンなどの金属類は、電気メス使用時にやけどの原因になることがあります。
→ ヘアピンも含め、外してください。
⑧ ひげ:口ひげ・あごひげ・ひげの長さを問わず
あご・口周りのひげは、麻酔中のマスク換気やチューブ固定の妨げになることがあります。
人工呼吸の管がずれると呼吸ができなくなるおそれがあります。
→ 手術を受ける方は、入院前または手術前までに必ず剃ってください。
手術後の痛みは、我慢するものではありません。当院では、回復を助けるために痛みを適切に和らげることを大切にしています。
手術後の疼痛管理はなぜ大切なのか?
① 早く回復できる
痛みが強いと、体を動かすのがつらくなるため、動かないことで筋力が低下し、回復が遅くなることがあります。また、肺炎や血栓(エコノミークラス症候群のような状態)のリスクも高くなります。痛みをしっかり抑えることで、早く動けるようになり、回復が早くなります。
② 術後の合併症を防ぐ
痛みがあると呼吸が浅くなるため、肺に空気がしっかり入らず肺炎のリスクが高まります。また、血流が悪くなると足の静脈に血の塊(血栓)ができ、それが血栓塞栓症につながることがあります。痛みを抑えることで肺炎や血栓塞栓症の危険度を下げることができます。
③ 精神的なストレスを減らせる
痛みが続くと、「つらい」「不安だ」「眠れない」という精神的なストレスが強くなります。これがストレスホルモンの増加につながり、傷の治りを遅くすることもあります。
痛みが少ないと、気持ちも楽になり、安心して過ごせます。また、しっかり眠れるので回復がスムーズになります。
当院では以下の方法を用いて手術後の疼痛管理を行っています。
患者自己鎮痛法
患者自己鎮痛法(PCA)とは?

手術後の痛みを和らげる方法の一つに「患者自己鎮痛法(PCA)」があります。これは、「自分で痛み止めをコントロールできる装置」を使った鎮痛法です。
通常、手術後の痛み止め(鎮痛薬)は医師や看護師が投与しますが、PCAを使うと患者さん自身が必要なときに痛み止めを投与できます。
「PCA(Patient-Controlled Analgesia)」とは「患者さんが自分で痛みをコントロールできる鎮痛法」という意味です。
患者自己鎮痛法(PCA)の利点
① 自分のタイミングで痛み止めを使える
手術後、痛みが出てきたときに「今すぐ痛み止めを使いたい」と思っても、医療スタッフが来るまで待つ必要があることがあります。しかし、PCAならボタンを押すだけで、あらかじめ設定された量の痛み止めが投与されるため、痛みを我慢する時間が短くなります。
② 使いすぎを防ぐ安全機能があります
「ボタンを押しすぎて痛み止めを使いすぎるのでは?」と心配になるかもしれませんが、PCAには安全機能がついているので、決められた量以上は投与されない仕組みになっています。
③ 痛みのストレスを減らし、回復を早める
痛みが強いと呼吸が浅くなったり、体を動かすのがつらくなったりします。PCAを使うと痛みを効果的に抑えられるため、リラックスして過ごせるようになり、手術後の回復も早まります。
当院では、経静脈投与あるいは硬膜外投与のいずれにおいても患者自己鎮痛法(PCA)の行える装置を準備しており、必要と判断した患者さんに使用しています。
PCA装置の基本的な仕組み


PCA装置は痛み止め(鎮痛薬)を決められた量だけ投与するための機械で、次のようなパーツで構成されています。
a. ボタン(患者さんが押す)
患者さんが「痛いな」と感じたときに押すと、適切な量の痛み止めが投与されます。
b. ポンプ(薬を送る機械)
ボタンを押すと機械が自動で適切な量の薬を送る仕組みになっています。
c. 点滴チューブ(経静脈PCA)またはカテーテル(硬膜外PCA)
静脈や背中に入れた管を通じて、薬が体内に入ります。
d. 安全機能(ロックアウト機能)
「ボタンを押しすぎて薬が多く入りすぎるのでは?」と心配されることがありますが、PCA装置には「一定時間内に決められた回数以上は投与されない」という安全機能がついています。
術後疼痛管理チーム

術後疼痛管理チームとは?
手術後に痛みを適切にコントロールするために、医師・看護師・薬剤師などの専門家がチームを組んで患者さんをサポートするグループを「術後疼痛管理チーム」といいます。
このチームは、手術後の痛みをできるだけ和らげ、患者さんが快適に回復できるようにすることを目的としています。
手術後の痛みは放置するとさまざまな悪影響を引き起こします。
- 痛みのせいで動きにくくなり、回復が遅れる
- 呼吸が浅くなり、肺炎のリスクが高まる
- 痛みのストレスで、不安や不眠が増える
「痛みをしっかりコントロールする」ことで、これらの問題を防ぎ、早く元気に回復できるようにするのが術後疼痛管理チームの役割です。
術後疼痛管理チームのメンバー
このチームには、さまざまな専門職が協力して関わります。
- 麻酔科医:適切な鎮痛方法を決め、管理します
- 看護師:患者さんの痛みの状態を観察し、適切なケアを行います
- 薬剤師:鎮痛薬の調整や副作用管理をサポートします
それぞれの専門家が協力することで、患者さんに合わせた痛みの管理を行います。
術後疼痛管理チームの患者さんにとっての利点
① 痛みを適切にコントロールできる
患者さんの痛みの程度や状態に応じて、飲み薬・点滴・硬膜外麻酔・神経ブロックなど、適切な方法を選びます。
② 安全に痛みを抑えられる
痛み止めの薬には副作用もあるため、適切な量や種類を専門家が管理します。これにより、痛みを抑えつつ、安全性を確保できます。
③ 早く回復できる
痛みが強いと、体を動かすのがつらくなりますが、痛みをしっかり抑えると、歩いたり深呼吸したりしやすくなり、回復が早まります。
④ 不安が減る
痛みがあると、不安やストレスが増えることがありますが、専門のチームがサポートしてくれるので安心できます。
ペインクリニックについて
当院のペインクリニック外来では、痛みを抱える方々がより快適に生活できるよう、専門的な立場から、痛みを和らげるための治療を行っています。痛みは非常に個別的であり、原因や症状に応じた治療が必要です。しかし、痛みの完全な解消が難しい場合もあります。そのため、私たちは患者さんとともに痛みを軽減し、生活の質を改善するための治療を行っています。
痛みの原因に応じた治療方針を提案
当外来では、医療技術を駆使し、患者さん一人ひとりの痛みの原因や背景を丁寧に評価することから治療を始めます。薬物治療や神経ブロック療法、物理療法など、症状に応じた治療法を組み合わせ、痛みの軽減を目指します。ただし、すべての患者さんに完全な鎮痛を保証することは難しく、治療の目標は痛みの軽減と生活の質の向上にあります。
痛みの軽減と生活の質向上を目指す
私たちは、痛みの完全な除去が難しいことを理解していますが、それでも患者さんができる限り快適に過ごせるよう、治療に取り組んでいます。痛みの軽減に加えて、日常生活の中でできることを増やし、心身ともに充実した生活を送れるようサポートします。リハビリテーションも重要な治療の一環として提供し、他部門と協力して治療をお手伝いします。
医師とスタッフが一丸となってサポート
当院のペインクリニック外来では、医師だけでなく、理学療法士や看護師など、複数の専門職が連携して治療を行っています。患者さんの症状や状態に合わせた治療計画を立て、無理のないペースで痛みの軽減を目指していきます。
ご相談・ご予約はお気軽に
痛みの問題に関してご不安やご質問があれば、どうぞご遠慮なくご相談ください。患者さん一人ひとりの状況を理解し、適切な治療方針を一緒に検討します。痛みの管理は長期にわたることもありますが、私たちと一緒に、少しでも改善を実感できるよう取り組んでいきましょう。
こんな痛みが対象になります
当院のペインクリニック外来で対象となる疾患

ペインクリニック外来でできること
- 薬物療法:鎮痛薬・鎮痛補助薬
- トリガーポイント注射
- 筋膜リリース
- 硬膜外ブロック
- その他の神経ブロック
せきもと けんいち
関本 研一
| 役職 | 手術部長 |
|---|---|
| 出身大学 ・卒年 |
群馬大学 平成11年卒 |
| 専門分野 | 麻酔管理全般、ペインクリニック |
| 認定資格 |
|
ふくしま ゆうき
福島 祐樹
| 役職 | 麻酔科医師 |
|---|---|
| 出身大学 ・卒年 |
信州大学 平成25年卒 |
| 専門分野 | 麻酔管理全般 |
| 認定資格 |
|
うちはし よしたか
内橋 慶隆
| 役職 | 麻酔科顧問 |
|---|---|
| 出身大学 ・卒年 |
群馬大学 昭和57年卒 |
| 専門分野 | 麻酔管理全般 |
| 認定資格 |
|
外来担当医表
| 時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 午前 | 内橋 慶隆 | 関本 研一 | 内橋 慶隆 | ||
| 午後 | 関本 研一 (ペインクリニック外来) |
診療実績
麻酔科 診療実績(麻酔件数)
| 年度 | 全身麻酔 | 硬膜外麻酔 | 脊髄くも膜下麻酔 | 伝達麻酔(神経ブロック) | その他 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2020年度 | 707 | 6 | 435 | 0 | 0 | 1148 |
| 2021年度 | 674 | 11 | 484 | 0 | 1 | 1170 |
| 2022年度 | 710 | 21 | 520 | 0 | 2 | 1253 |
| 2023年度 | 779 | 18 | 511 | 0 | 4 | 1312 |
| 2024年度 | 801 | 19 | 484 | 0 | 5 | 1309 |
| 2025年度 | 1053 | 16 | 496 | 1 | 4 | 1570 |
学術実績
英文論文
2023年
Sugiyama Y, Takazawa T, Watanabe N, Bito K, Fujiyoshi T, Hamaguchi S, Haraguchi T, Horiuchi T, Kamiya Y, Maruyama N, Masumo H, Nakazawa H, Nagumo K, Orihara M, Sato J, Sekimoto K, Takahashi K, Uchiyama M, Takahashi K, Yamaguchi M, Kawamata M. The Japanese Epidemiologic Study for Perioperative Anaphylaxis, a prospective nationwide study: clinical signs, severity, and therapeutic agents. Br J Anaesth. 2023 Mar 24;S0007-0912(23)00100-9. doi: 10.1016/j.bja.2023.02.023.
麻酔管理における「術前診察」とは?
手術を安全に受けるために、「手術前に麻酔科の医師が行う診察」のことを「術前診察(じゅつぜんしんさつ)」といいます。
手術の際、患者さんは全身麻酔や脊髄くも膜下麻酔などの区域麻酔を受けますが、麻酔が安全にできるかどうかを事前に確認することがとても大切です。
術前診察の目的
① 麻酔のリスクを評価し、安全な方法を決める
患者さんによって年齢・体の状態・持病(糖尿病・心臓病など)が違うため、麻酔の影響も異なります。そこで安全に麻酔を受けるために、事前に体の状態をしっかりチェックします。その上で、術前診察では、「この患者さんにとって適切な麻酔方法と周術期管理は何か?」を判断します。
② 手術中・手術後のトラブルを防ぐ
以下のようなリスクを事前に把握することで、適切な対策を取ることができます。
心臓や血圧の問題 → 手術中に血圧が急に下がるリスク- 喘息や喫煙歴 → 麻酔後に呼吸が苦しくなるリスク
- 薬のアレルギー → 麻酔薬が使えない可能性
③ 患者さんが安心できるよう説明をする
「麻酔がちゃんと効くのか心配…」「手術中に目が覚めることはないの?」このような患者さんの不安や疑問に答えるのも、術前診察の大切な役割です。
術前診察の流れ
-
問診(体の状態をチェック)
- 持病(糖尿病・高血圧・心臓病・喘息など)があるか?
- 普段飲んでいる薬はあるか?
- アレルギーや麻酔の経験はあるか?
特に、以下の状況に当てはまる場合は術前外来の麻酔担当医にお伝えください
- ご自身または血縁者に過去の麻酔実施で問題があった場合
- 薬物アレルギーを指摘されている場合
- 他院から処方されているお薬がある場合
- サプリメント・栄養補助食品をお使いの場合
-
身体診察(体の状態を調べる)
血圧や心臓・肺の音を確認
口や喉の構造をチェック(気管挿管がスムーズにできるかどうか) -
検査の確認
血液検査、心電図、レントゲンなどの結果をチェック
-
麻酔の説明と相談
どんな麻酔を使うのか?
手術中・手術後に気をつけることは?
疑問や不安があれば、しっかり説明します。

